この女(ひと)を見よ 本荘幽蘭と隠された近代日本

言葉が追いつかない一人の女性──日本近代の埋もれた顔

この(ひと)を見よ

本荘幽蘭と隠された近代日本

 

江刺昭子・安藤礼二 編著

 

7月23日発売 ISBN978-4-906791-47-7 C0023

四六判・上製 232頁 本体2300

 明治後半から昭和・戦前にかけて、破天荒な生と思想の軌跡を残した一人の女性がいた。救世軍から神道へ、そして禅と日蓮宗へ、新聞記者から女講談師、そして女優へ、その足跡は西日本一円から沖縄、大陸・南洋にまでおよぶ。このケタはずれな精神と行動力がやってきた場所、そこには宗門改革運動からアジア主義・農本主義まで、戦後におおいをかけられてしまった思想のエネルギーに満ちた胎動があった。発掘されたある女性像、そこから日本近代の隠された可能性とパワーが見えてくる。

目次

 はじめに 幽蘭のトポス       安藤礼二

歌う幽蘭               本荘幽蘭

証言で編む幽蘭推定年譜

幽蘭とアジア主義           安藤礼二

証言 幽蘭の生            幽蘭聞書き

本荘幽蘭とは誰なのか         江刺昭子

語る幽蘭               本荘幽蘭

音に聞く幽蘭女史           青柳優美、相馬黒光ほか

幽蘭評判記              新聞・雑誌 消息記事

 むすび 幽蘭という問題       江刺昭子

著者紹介

江刺昭子

1942年生まれ. 早稲田大学教育学部国語国文科卒. 64年から70年まで, 文化出版局にて『ミセス』ほかの雑誌編集に携わり, のちノンフィクションライター, 女性史研究者に. 72, 草饐──評伝大田洋子』で第12回田村俊子賞受賞. 著書に,女のくせに──草分けの女性新聞記者たち』85,透谷の妻──石阪美那子の生涯』(95,『ミセス』の時代──おしゃれと(教養)と今井田勲』(2014)ほかがある.

 

安藤礼二

1967, 東京生まれ. 文芸批評家. 多摩美術大学美術学部芸術学科准教授. 著書に,『神々の闘争 折口信夫論』(2004, 群像新人文学賞, 芸術選奨新人賞受賞), 光の曼陀羅──日本文学論』(2008, 大江健三郎賞, 伊藤整文学賞受賞), 『霊獣──死者の書 完結篇』(2009), 『祝祭の書物──表現のゼロをめぐって』(2012), 『折口信夫』(2014)ほかがある.