秘教的伝統とドイツ近代 ──ヘルメス、オルフェウス、ピュタゴラスの文化史的変奏

神秘主義的ヴィジョンの系譜と「近代」

 

 坂本貴志

秘教的伝統とドイツ近代

──ヘルメス、オルフェウス、ピュタゴラスの文化史的変奏

2014227日刊行 A5判・上製 340

本体価格4600円 ISBN978-4-906791-26-2 C1098

■ 年末になると鳴り響く第9交響曲の歌詞「歓喜に寄せる」、太宰治の翻案によって広く知られる「走れメロス」、これらシラーの手になる作品の背後に、思想史・文化史の知られざる文脈を読み解く。

■ ヘルメス主義、オルフェウス教、ピュタゴラス派……いずれも古代中東とエジプト・ギリシアに起源をもつ神秘主義的思想の潮流である。そしてこれらは、思想史のメインストリームに対する、ダークサイドの系譜を形づくってきた。これまでの通史的記述からは見えてこない、二つの思潮の密やかでダイナミックな関係を浮かび上がらせる。

■ シラー、カント、レッシング、ゲーテ、フロイト……ドイツ近代を切り開いた大立て者たちと秘教的伝統との間には、どのような影響関係があったのだろうか。カントとスウェーデンボリ、シラーとカバラ、ゲーテとイシス信仰、フロイトと動物磁気など、相互の影響と乖離を具体的にたどる。

■ グノーシス、ユダヤ教カバラ、ネオプラトニズムの思潮から、フリメイスン、薔薇十字団、そしてメスメリズムへ……変奏されるヴィジョンの系譜としての「隠されてきた思想史」を明るみに出す。

目次

 第一章 時代と思想

 第二章 崇高とカバラ的宇宙論

 第三章 シラーの美学と秘教的伝統

 第四章 メタモルフォーゼ

 第五章 幻想と政治

著者紹介

坂本貴志(さかもと・たかし)

1969年生まれ。専攻、ドイツ文学。東京大学大学院人文社会系研究科大学院博士課程修了。現在、立教大学文学部教授。主要論文:「歴史哲学概念としての崇高──シラーの崇高のもつ「破壊的な力」について」「異界の系譜──ハウプトマンと鏡花」「「非物質的世界のひとつの巨大な総体」というトポス──キリスト教カバラ、動物磁気、集合的無意識」ほか。